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土の中を探検してみよう

東京電機大学理工学部公開講座
東京都地質調査業協会技術委員会

 このトピックスは、小学校4年生~中学校3年生を対象とした「東京電機大学理工学部公開講座」の中で東京都地質調査業協会(関東地質調査業協会東京都支部)が平成9年10月11日に行った講座の内容をまとめたものです。


 それでは土の中を探検してみましょう。\(^.^)/
 探検に先立ち、土の全体をながめ、つぎに土の中の細かな様子を観察します。最後に、実験で土の中の不思議を探検します。

1.土の全体の様子

1.1 台地と低地(東京電機大学周辺の地形)

 まず最初に、みなさんが住んでいる東京電機大学周辺(埼玉県鳩山町付近)の地形を見てみましょう。

東京電機大学(鳩山校舎)周辺の模式地形

 このような地形はどのような地層から構成されているのでしようか。

 普通、山地は非常に硬い岩石からなり、丘陵地はやや軟らかい岩である軟岩からなります。
 また、台地は締まっている土が、低地には軟らかい粘土やゆるい砂・砂れきが、堆積しています。

1.2 地盤のできかた(土を知る)

 それでは本日のテーマである土は、どのようにして出来るのでしょうか。
  • 土は、私たちの身近にある岩石が風化して、風雨などの浸食作用や化学作用によってできます。
  • 土はまだ固まっていない堆積物であり、地球の表面に薄く分布します。
  • この様にして出来た土は運搬作用(風、川・海などによる水)よって運ばれます。

1.3 土を調べる

 地下には地表面に分布している土と同じものが、堆積しているのでしようか。
 がけ地などの地層の断面を観察するといろいろな土が分布していることがわかりますね。
 それでは、がけのない地下の土はどの様に調べるのでしょうか?

 地下の土を調べる方法は、地盤調査と言われています。
 地盤調査はまず最初に、地形図などにより山地、丘陵、台地、低地の地形分類を行い、おおよその地盤の様子を調べます。

 更に詳しく調べる地盤調査の代表的な調査方法がボーリング調査です。
 ボーリング調査の特徴は、地下の土や岩石を取って観察することにより地層の構成を明らかにすることです。
 また、ボーリング孔を利用していろいろな試験を行うこともできます。


1.4 士の構成と構造

 それでは土の中に入って細かく観察しましよう。
 土は「土粒子(土の粒子)」と「水」と「空気」から出来ています。
 土の性質は、ひとつひとつの「土粒子」の大きさと「水」や「空気」の量、特に「水」の量で大きく変化します。

●土の粒子の大きさ
 土を構成する土粒子は、その土粒子の粒の大きさによって次のように分類されます。

土粒子の粒径の区分とその呼び名(日本統一土質分類)

それぞれの土の特徴は次のようになります。

・れき質土
 「れき」と砂が混合したもので河川の河原などにあります。
 れき質土は水の透水性(土の中を水が流れる速度)は高く、地盤の支持力(支える力)は大きい。

・砂(砂質土)
 砂粒子も眼で観察できる大きさであり、指先でつまんでこすってもザラザラしています。
 服に付いた砂ははたけばすぐに落ちます。砂質土も水の透水性は良く、地盤の支持力は比較的大きい。


・粘性土
 主に粘土、シルトなどの土粒子の細かい土です。
 服に付いた泥(粘性土)は乾燥させて、こするなどしなければなかなか落ちません。
 粘性土は乾燥するとかたくなりますが、水分を含むと軟らかくなります。
 また、粘性土の透水性は小さく、普通地盤の支持力は小さい。


●土の含水量
 土の性質はその中に含まれる水の多少によって、大きく変化します。砂場の砂でダンゴを作る場合、少し水を加えるとうまくダンゴができますね。
 しかし、そのダンゴも乾燥してくるとボロボロに崩れてしまいます。
 また、粘土でダンゴを作ると乾きにくいし、ネバネバしてよく手にくっつきますね。
 なぜでしょう。
 この原因は、土の中に含まれている水の表面張力です。

 
表面積と体積の割合

 土粒子の表面積は表のように、土粒子の大きさが小さくなるにつれて、体積に比べて極端に大きくなります砂より粘土の方が表面積の割合が大きくなり、粘土はなかな乾きません。
 粘土は砂に比べて、表面張力の働きが強いためです。
 普通、土の中に含まれる水分の量(含水比)によって土の強さは大きく異なります。


2.土の中の不思議な実験

2.1 砂に対する実験

地震が起きると新聞やテレビで"液状化"による被害が出たことが報道されています。
この現象を水そうで再現する実験です。

砂地盤が水のようになり、重いものは沈み、水より軽いものは浮かびます。
実際の建物では、沈んだのは重い建物、倒れたのは軽い建物、浮いたのは地下に埋まっている下水道やマンホールにあたります。

砂の粒子の大きさの違うものを混ぜ合わると体積はどうなるかな。

体積は小さくなります。
これは、大きな砂の粒子の問に小さな砂の粒子が入り込んだためです。
だから、色々な大きさの砂の粒子が混ざった土ほど良く締まり硬くなります。

2.2 倒立振り子の実験

 皆さんは、地震のとき高い建物と低い建物ではどちらの建物が大きく揺れるかご存じでしょうか。
 実はこれは建物のもっている「固有周期」というものにより異なるものなのです。
 この実験では、振り子を使って、この固有周期について学んでみたいど思います。
 実験方法は至って簡単で、下図に示すような倒立振り子を用います。

倒立振り子の模型

 振り子と土台を結ぶ棒の長さは、振り子により異なりますが、これは建物の高さと考えてください。
 まず、振り子を極く軽く一定方向、かつ一定間隔で揺すってみてください。この時、一つ一つの振り子の揺れ幅や揺れる早さに注目してください。
 揺れが小さい場合は、今揺すったカよりやや強いカでもう一度揺すってみてください。
 振り子の動きの違いが良〈わかると思います。
 さて、最も早く動く振り子と、最も大きく揺れる振り子はどの振り子になるでしょうか?


最も大きく揺れる振り子 (3)
最も早く揺れる振り子 (1)

 予想は当たったでしようか?
 それぞれの長さの振り子は、棒の長さが長くなればなるほど大きく、ゆっくりと揺れることがわかると思います。
 このときに、棒が一往復するのに要する時間を専門用語で「固有周期」と呼ぶのです。


 実際、同じ地震が起こっても5階、10渚、20階の建物では揺れ方がそれぞれ異なります。
 一般には建物が高くなればなるほど建物の固有周期が長くなり、ゆっくりと大きく揺れるようになります。
 また、固有周期は、地面の上に建っている建物のほか、地面の下の土にもあります。
 普通、軟らかければ軟らかいほど揺れ幅が大きくなります。
 もし、土の固有周期と建物の固有周期が一致したらどうなるでしょうか。この場合、共振という現象が起こり、揺れ幅がさらに大きく なることになります。
 建物の耐震設計は、土の固有周期や建物の固有周期を計算し、地震によって建物が揺れても安全なように行っているのです。

2.3 プリンとようかんの実験

 プリンを「やわらかい地盤」、ようかんを「かたい地盤」として、その上に画用紙で作った建物をのせて台を横に動かしてみる。
 このとき、建物はどのように揺れるか。また、地盤や、建物の違いで揺れ方がどう変わるか確かめる。


 同じ形の建物をそれぞれプリンとようかんの上にのせてゆらす。
 2個の建物はそれぞれどのように揺れるか。
 どちらか大きく揺れるか。


建物(1)の時、ようかんの上の建物はようかんはゆがまないが、建物は大きくゆがんで揺れた。
プリンの上の建物は、プリンも大きくゆがみ、建物も大きくゆがんで揺れた。
建物(2)の時、ようかんの上の建物はしかりしてゆがまなかった。
プリンの上の建物は、建物はゆがまなかったが、プリンがゆがんで大きく揺れた。

●この実験でわかったこと
 実際の建物の場合、かたい地盤の所でも建物(1)のように簡単な構造では、地震の時大きく揺れて建物が壊れてしまう。
 やわらかい地盤でも建物(2)のようにしっかりした構造の建物であれば、あまり大きな揺れでなければ、建物は壊れない。

2.4 建物基礎の実験

 建物の基礎の種類は大きく分けて次のようなものがあります。
 ・直接基礎:独立基礎、布基礎、べた基礎
 ・くい基礎


直接基礎の模型をやわらかい地盤にのせて、おもりを載せると模型がどの様になるか確かめてみます。


 おもりは「独立基礎」→「布基礎」→「べた基礎」の順に多く載せることが出来た。
 やわらかい地盤の一部が硬いと、基礎は傾いてしまった。
 実際の建物を建てる場合は、建物の建つ地盤のかたさをよく調べて基礎をどの様にするか決めないと建物が沈んだり、傾いたりしてしまうことがわかった。

2.5 ボアホールテレビの実験

 ボアホールテレビは、医学の分野で胃や腸などの内蔵を診察するために利用されるファイバースコープと同様のしくみで、地面に掘ったボ一リング孔からカメラを降ろすことことによって地面の中のようすを観察するものです。
 おおよそのしくみは下図に示すような組み合わせになっていて、ボーリング孔に降ろすカメラ、モニターテレビ、制御部からなっています。


ミッキーマウスの絵を筒の中に入れてカメラで見てみよう。
カメラではどんな風に見えるのかな。


 最初は魚眼レンズで見たような大きくゆがんだミッキーマウスだった。
 コンピューターで画像を処理したら、もとの絵と同じミッキーマウスになった。
 このボアホールカメラは、直接眼で見ることの出来ない地下の地盤の様子を見ることが出来るのです。
 まだ新しい技術ですが、地下深くの断層や岩盤の割れ目(亀裂)等を直接確認できるのです。
 地震や地滑り等の防災対策の調査をするときに役立つので注目されています。